月別アーカイブ: 4月 2011

[番外] ほりえもんについて

かつてライブドア事件で世間を騒がせた「ほりえもん」に4/26付けで実刑が下されました。
あまりよく知りませんが本件、山一証券やカネボウ等の起こした粉飾決算事件に比べてみると、
ロングスパンの不良資産隠蔽とは異なり、M&A による買収企業をほんの一瞬連結対象から外したところを
検察にチクチクつつかれて今に至った、とのことですね。

ボク自身、この手の事件自体にはあまり興味がないのですが、ほりえもんという人物には物凄く興味があり、
実は大変感謝もしています。
今日は自分のバイブル的なものだった、ほりえもんの思想について少しだけ話そうと思います。
  ## 今日は相当物理から離れますが、とてもタイムリーなアレなんで。
10年近く前でしょうか、とあるテレビ番組で頭が良い人間と悪い人間の差を議論していました。
前者が体現出来ていること、そのエッセンスは実はとても単純で、カラクリさえマネすれば
平凡な頭脳の人間でも飛躍的に脳を活性化できる、というのです。
みなさん、ご自身の経験やカン、考え方というものをよく理解されていますでしょうか?
ボク自身、正直この話を見るまで自分のことすらよく理解が出来ていなかったと思います。
社会生活の中で「頭が良い」や、「仕事が出来る」と称され矢面で活躍している人間は、
そもそものIQであったり器量の良さ、キャラ等はさほど関係なく、それまでに培ったバックボーンが
どれだけ効率よく活かされているか?に尽きるというのです。

この理屈は、「全ての物事には因果関係が存在する」という根幹に帰着するのです。
全ての物事って?どこからどこまで?というと、本当にすべての物事なんです。
例えば、大学で電気電子工学を先行しプログラムをいじっていた人間がソフトの会社に就職し、
扱い慣れた言語を使って人より早くアウトプットを出す。これは非常に解りやすい例だと思います。
しかし、一見まったく何の関連性もない事象の間にも因果関係はある、と、ほりえもんは言うのです。

「朝食でコーヒーとトーストを摂取した」という事象と、「好きな人に告白してフラれた」という事象、
まったくもって何も関連性はないですよね?
でも、この点在する二つの経験をひもで結び、そこに個々人の主観でいいので何かしら関連性を見出して
マーキングしてみるんです。
例えばボクなら、「カフェインでお腹の調子が悪くなると、表情が険しくなる」とします。
さて、これを因果関係としてこの二つを見てみると、「朝のコーヒーでお腹がいたくなったからあの子にフラれた」、
という一連のストーリーを強引にくみ上げることが出来るわけです。

では、同日、おばあさんに席を譲ったという経験もした場合、次に「コーヒー」と「フラれた」という両事象から
この事象へひもづけし、それぞれの関連性はなんだろう?と思考を推し進めると、「コーヒー」と「フラれた」と
「席をゆずった」という三者間全てに関連性をマーキングすることが出来るようになります。

このように、個々人がバックボーンやバックグラウンドを最大活用するために大事なのは、上記のように経験した事象、
すなわち「点」を見直すのではなく、「点」と「点」の間に横たわる因果関係を見直すことにある、というのです。
人間の記憶素子の数と能力には限界があり、たくさんの「点」は意外と早く忘れてしまう、それよりも、
そこをひも付ける因果関係を把握し、頭の中で印象付けることを繰り返し、そして慣れることで、
次に新たな経験をした際、それまで経験した全ての「点」から一斉に新しい「点」への線が引っ張られ、
沢山の因果関係がマーキングされ、結果さまざまな視点・切り口によるバリエーションに富んだ思考形態に
進化する、というのです。

この話、賛否はあるでしょうけど、すごくタメになりました。
当時、手始めにボクは「職場」、「研究室時代」、「バンド活動」、「恋愛」という4つの
大きなテーマの中で経験した物事を羅列、縦横無尽にそれらを結び関連性をマーキングしていきました。
これがやってみるとナカナカ面白く、一生忘れてしまいそうだった経験すらも、因果関係をひものマーキング
として把握することで、再び呼び起こすことが出来るようになっていました。

これは一種の脳トレだと思います。
最近はこんな根暗なトレーニング、やっていないのですが、今でも新たな仕事、新たな経験に直面した時、
以前よりもはるかに経験や関連性が瞬時に頭をよぎり、生産性の高い方向に話を加速出来るようになった、
ような気がします。証明しようがないので何とも言えませんがw

と、まぁ長くなりましたが、今日言いたかったのは、
遠く離れた星々の間にすら微かな万有引力があるのと同じで、生活の中で得る全ての貴重な経験の間には例外なく関連性はある、
それを見つめることはとても面白く、且つ考え方を豊かにしてくれる。
ひいては差別や偏見といった余計なものも取り除いてくれる、ということっす。

あまりコアな持論を人に話すことはしないのですが、
今日はある意味、自分の恩人が少しの間旅に出ることが決まった日なので書かせてもらいました。
といっても、リツイートが多すぎるのでツイッターフォローはしてないんですけどね。

三茶ロボット from Sangendyaya

現代コンピュータの仕組み

さてこんばんは、三茶ロボットです。
前回、現代コンピュータは 0 と 1、つまり2進数の計算を行っているという部分までお話しました。
今日はこの2進数演算の仕組みを少しだけ掘り下げていこうと思います。

現代コンピュータ(以後ゲジゲジ)は、半導体という材質を使っています。
これにより、ON で1, OFF で0を返すスイッチのような状態を実現しています。
ゲジゲジの中にはこのスイッチがたくさん入っており、その数は家電製品の仕様が複雑化すると共に、
年々増加の一途を辿っています。
とくに2010年代に入ってインテル社のCPUや、nVIDIA社のGPUにおいては、このスイッチの数がおおよそ
5億個ほどに至る製品も出てきています。

さて、このスイッチを組み合わせて作られる最も基本的な素子が 「AND」「OR」「NOT」の三つになります。
これらの回路に対する、入力と出力の表を下記に記します。

 

 

各素子の動作は名前の通りです。

「AND」 : 二つの入力が両方とも1なら、出力に1
「OR」 : 二つの入力でどちらかが1なら、出力に1
「NOT」 : 入力が1なら出力0、入力が0なら出力1

* 実際、半導体がこの三つをどう構成しているか?は割愛します。
* あまりにマニアックな話になりますので。

まずこれを基礎として、次に2bitの足し算回路を考えてみます。
2bit といっているのは、2進数での2桁の数値を言います。
この2bitには、「0,0」「0,1」「1,0」「1,1」の4通りがあります。
前回お話した、ストⅡ方向キーは、8通りの方向を表現するのに三つのスイッチを用いました。
つまり、方向キーは3bitで表現できる、ということになります。
このように、bit数は桁が上がるにつれ、表現できる数が2の1乗、2乗、3乗、、、と増えていきます。

さて、2bit足し算の話に戻します。
[A2,A1]、[B2,B1] を足して、 [C2,C1]を計算します。
例えば、[0,1] と [0,1] を足した場合、一の位がケタ上がりをし、[1,0]が答えとなります。
入力の組み合わせを網羅すると、入力と出力の関係は下記のようになります。
2桁目が両方1の場合、本来3桁目が1になるので、桁上がりという列を加えてます。

 

さて、この演算を実現する回路を先ほどの3つの基本素子で表現してみると、
下記の図のようになります。
あの、もう既に嫌になってる方、いますよね? すいません。
ええ、この章に入って少々やりすぎてる感、わたし自身感じています。
こんな理系チックで小難しい話はもうしません!反省してるっ!!

 

 
ちょっと気が向いた方いましたら、先ほどの3素子の動作と照らし合わしながら
この回路に0や1を入力して回路を追ってみてください。
たぶん、表のとおりにC1,C2が出てくるハズです。久々に回路図書いたので若干自信ないですが。

とまぁ、このように基本素子を使って足し算回路を実現できたわけです。
同じように、引き算、掛け算、割り算の回路も実現できるので、組み合わせることで微分積分回路、
なんてのも作れます。
スマートフォンやPCなど、高性能な家電に入っているゲジゲジは、言ってみればこれのバケモノ版です。
iPhoneのゲジゲジの中は、この回路の数千万倍の基本素子が詰まっているのです。
すごいですね。こうやって複雑な演算を小さなゲジゲジで実現するテクノロジーは、
いつ考えてもすげーなーと、ボク自身関心しています。

回路をどんどん大きくすれば、取り扱える入力パターンの数や計算内容の幅を大きく出来、
より複雑な動作仕様を網羅する、ということが可能となってきます。
しかし、以前も言いましたが、膨大な計算量をこなせるもの、複数の計算を同時に実行することは無理です。
たとえば、先ほどの2bit足し算回路で [0,0] + [0,0] と [1,1] + [1,1] を計算する場合、
順番に値を入力するしかありません。当たり前ですよね。
さて!ここから量子論が再登場します。
量子論では、物質や光が複数の状態を確率の混ぜ合わせで同時に実現する、というお話をしました。
0と1のどちらかの状態をとる半導体のbitに対し、”0と1を両方同時にとる”「量子bit」という概念を
導入することにより、これまで順番に実行しなければならなかった問題を、なんと一回で終わらせてしまうのです。
つまり、入力パターンをいちいち切り替えて解くような問題に対し、量子コンピュータはめっぽう強いということになりますね。

では次回予告です。
実は量子コンピュータが実現すると、銀行や軍事機密、他あらゆるセキュリティを
支える情報暗号化技術が脅かされてしまいます。
その辺の話をざっくばらんにお話したいと思います。

三茶ロボット from Sangendyaya

現代コンピュータ と 昇竜拳

三茶ロボットです。こんばんは。
今日はまず量子コンピュータを理解する布石として、
現代社会を支える半導体コンピュータの話をします。

半導体って、家電をこじあけると中に入っている黒くてゲジゲジのアレです。
みなさんの使っている電化製品の9割以上はゲジゲジを持っていると思います。
さて、このゲジゲジがどういう形で動いているのか、ストⅡリュウの必殺技で
説明していきましょう。

みなさん、リュウの必殺技、出し方覚えてますか? 

 

特に昇龍拳はナカナカ出ませんでしたねー。
しかも、ゲーセンで上手いこと昇龍拳で対戦相手を迎撃すると

 「 おいてめー、昇龍拳使うんじゃねぇよ 」

とか、ヤンキーにからまれちゃいましたよねぇ。
それはさておき、手順に沿って正しくレバーを入れると、画面上でリュウはちゃんと技を出してくれます。
これは、ゲーム機が異なる入力信号を判別し、技を選定しているということになります。

まず、方向レバーには、上下左右、右上、左上、右下、左下の8方向が用意されてます。
このレバーの下には3つのスイッチが入っています。
各スイッチは、ONの時 1V を出力、OFFの時 0V という電圧を出力します。
簡易的に「ON なら 1、OFF なら 0」とします。
方向と3つのスイッチのON/OFF関係は以下のようになります。

 

 
このように、3つのスイッチの組み合わせパターンで全ての方向を表現します。
これらスイッチの出力した信号は、例のゲジゲジに鑑定され、昇龍拳コマンドならば
昇龍拳判定結果をだし、画像出力用のゲジゲジに信号を伝達、結果画面上のリュウが
技を繰り出す、こんなイメージです。

ゲジゲジの中の計算は、レバーのスイッチと同じで、色々なパターンの 0,1信号を演算し、
結果も0,1の組み合わせで出力します。
つまりゲジゲジの中は二進数の計算が行われています。

 

 

 これは非常に簡単な例ですが、凄まじく処理内容の多い画像や音楽なども
高性能のゲジゲジが複雑な入力パターンに対し二進数で演算を行い、
結果を出力する仕組みをとっています。
このゲジゲジ内部はこうした1と0の信号を巧みに演算する素子がつまっています。
次にこれを軽く説明したいと思います。

うわーだめだ、今日はこれで終わりにします。
4部作でいけるかちょっと怪しいのですが、もう少々お付き合いお願いします。

三茶ロボット from Sangendyaya

量子コンピュータ?

こんばんは、三茶ロボットです。
さて、この先どんなお話をしようか迷ったのですが、やはり未来のために
みんなで知っておいた方が楽しいであろう、応用的な話を進めることにしました。

先日、東大のとある研究室で大きく開発の前進した「量子コンピュータ」。
これについて考えていこうと思います。
最近のコンピュータの進化はめまぐるしく、膨大な情報量を瞬間的に処理するために
動作速度を上げ、かつ並列演算を導入し、これを実現しています。
例えばソニーのPS3。組み込まれているCPUはソニー、東芝、IBMの三社間がプライドをかけて開発した
「セル・ブロードバンド・エンジン」です。
セルは動作周波数4GHzのプロセッサが最大7個並列で動き、分散処理のジャンルでギネスに認定されるほどです。
こうして、PS3は超ハイスペックなゲーム環境を実現しています。

 

 

しかし!! いくら高速かつ並列に演算が出来ても、
原理的に現在のコンピュータは一回に一度の計算しかできません。
つまり、どんな高性能のコンピュータでも、計算量があまりに多すぎる問題は100年たっても
1000年たっても解けないのです。
逆に、解けない問題があるからこそ、情報の暗号化やプライバシーを保護することが可能とも言えます。

さて、量子コンピュータはこの「一度に一回の計算しか出来ない」という原理的な問題を完全に覆す能力を秘めており、
そして1000年経っても解けない問題を一瞬にして解いてしまう人類の新たな可能性なのです。

これまでいくつかの例で、光や粒子は 「波 と 弾丸 両方の性質が重なり合ったヘンな状態」 ということを
見ていただきました。
こうした複数の状態を重ね合わせる性質を利用し、量子コンピュータは一台で全ての計算をやってのけるのです。

 

 

この話をするにあたり、今までよりも知識の下準備が若干増えてしまうと思いました。
というのは、この話、少々難しいんです。
そもそも今のコンピュータの仕組みって?というお話を少ししたうえで、
量子コンピュータとの対比を捉える形で段階的に話を進めさせてほしいのです。

ですので、本テーマはぱいれーつおぶかりびあんばりにシリーズ展開させてください。
長くても4部作で終わらせる予定です。
本日はハリウッド的に言えば序章にすら満たない感じですが勘弁してください。

三茶ロボット from Sangendyaya

んなバカな!人が見てると未来がかわるの?

こんばんは、三茶ロボットです。
近頃揺れに揺れますねー皆さん大丈夫でしょうか。気をつけましょうね。

さて、ここまでで 「光も粒子も、弾丸でありつつ波である」 ということをお話しました。
みなさん、うそくせーなーんかうそくせー、って思ってるでしょ!?
今日は、これを裏付けるような現象のお話をします。この話、初めて知った時、本当びっくりしました。

前回、光の回折(まわりこみ)を説明しましたね。
これに加え、下準備として 「光の干渉」 をまずはご説明いたします。
海の波って、山と谷がありますよね。音波も光も同じように、山と谷があります。
たとえば下の絵のように、二つの電球が光っている時、山と山が重なる部分は強まり合い、非常に明るくなります。
この効果を 「光の干渉」 と呼んでいます。

では次に、電球を一個のみ残し、下の絵のように壁に二つスリットを作ってみます。
するとスリットに突入した光は、 「回折(まわりこみ)」 の効果で、再度円形に広がっていきます。
その先にスクリーンを置いてあげると、二つの光が重なる部分は今ご紹介した 「干渉効果」 により、
とても強い線が見えるようになります。

 

 

実際、こういう干渉や回折は身近でよく起きていますし、よく使う技術でもあります。

では、さらに一工夫してみます。光源をこの電球から、
「屈強な弾丸である光子を一発づつ打ち出せる大砲」  に変えます。
弾丸モードの光も、前回お話したように波に変形する確率を秘めており、波モードの時はやはり、
回折する能力を帯びています。
ですので、一発ずつとはいえ、何発も連続して打ちまくると、電球のとき干渉を起こすポイントに
どんどん光がたまっていき、結果下の絵のような干渉縞が見えてきます。

これは、実際の実験で観測されている現象です。
弾丸として打ち出したハズの光が、回数を重ねれば重ねるほど波としての性質をあらわす場所に蓄積されていくのです。
つまり、弾丸であるものが波として振る舞う確率を持っている、ということになりますね。

さて、ここからが本日のメインディッシュです。この怪しい観測装置にもう一個スパイスを効かせます。
今、回折を起こしているスリット。ここに陰湿にもカメラを置き、光がどちらのスリットを通ったか確認できるようにします。
カメラが 「弾丸である光」 を激写する、ということは、この瞬間光は弾丸100%。
逆に言えば、波として振る舞える可能性を失うことになります。
この状況で先ほど同様、大砲君には何発も光を打ち続けてもらうと、おやおや、先ほどの干渉縞がなくなってしまうではないですか!

 
光が波と弾丸両方の性質を持っているが、弾丸として捉えた時、波としての性質をすべて失った証拠なのです。
全く不思議な話ですよね、人の意志で確認するかしないかで、結果が、つまりは未来が変わるんです。
これは、実際の実験で何度も証明されたことなんです。
ボクは大学1年の時この話を授業で聞き、うーん不思議だ、物理やっぱ面白いなーと思いましたね。

神隠しの話に戻りますが、おそらくは親が目を離している瞬間、チビッ子は弾丸にも波にもなれる可能性をもっており、
凄まじく低い確率で全身波に変形し、山を回折していったのでしょう。
ボクも子供が出来たら、その子が波に変形しないようなるべく見守ってあげたいなと思ってます。
さて、本日お話した内容は量子論のキーポイントとなる3大のルールのエッセンスです。

1. 光だろうが物質だろうが、「波」と「弾丸」両方の性質が重なりあったヘンな状態である
2. ヘンな状態は、人間が観測した瞬間、どちらかの状態に固定されてしまう
3. どちらの状態に固定されやすいか、という確率が現象ごとにそれぞれ存在する

ちょっと難しくなってきましたが、この妙な現実を受けとめていただき、
この後続く更なるエキサイティングなお話を一緒に楽しんでいきましょう。
三茶ロボット from Sangendyaya

オカルト寸前!波動の真骨頂!

どうも、三茶ロボットです。
さて、いよいよボールが壁をすりぬけるカラクリに迫りますよ。

前回、「光は波であると同時に屈強な弾丸」説を話しました。
今回、対象が光ではなくボールになります。つまり、原子や分子の集合体である、「物質」になるわけですね。
ではでは、いきなり結論からいきましょう。

「物質も光と同様に、弾丸であると同時に波である」

これです。この性質から、すべての説明がつくのです。
ではちょっと下準備をば。
波の性質の中には、「干渉」 や 「回折」 というものがあります。ここでは、音波の回折についておさらいします。
下の絵のように、たとえば音波の場合、何か障害物に遮られていても波はそれをまわりこみ、向こう側に到達できます。

 

もしこの性質がなければ、世の中大変ですよね。
隣の部屋にいるタラちゃんに「アレとって~」って言っても、タラちゃん取ってきてくれないわけですよ。
この性質は、海の波でも光でも同じことが言えます。
光についても、もし回折がない世界だったら、自宅の電気さえも照らす領域がすごく限られます。
それは、さながら!ビームのような!お茶の間が YMO のライブ会場みたいになりそうですよね。

ちなみに上図でもし壁の長さが100mm あったとしても、むちゃくちゃデカイ声を出せば音波は回折します。
計算上、壁の長さが無限大じゃない限り、回折の性質により音波は必ず向こう側に届きます。
さて、ここまでの話で鋭い方は気づいたかもしれません。
冒頭に述べた、「物質も波である」ということを考えつつ先ほどの文章をいじくってみると、

「壁の長さが無限大じゃない限り、ボールも回折して向こう側に届くことはできる」 ということになります。

ただ、ボール一個というデカい単位でこれが起きる確率は非常に小さいです。
このボールを細切れにしたもっとミクロな世界、電子や原子核という単位で、この現象はしょっちゅう起きてます。
前回、波である光が突如弾丸に姿を変えたことの逆バージョンで、
もともと弾丸だったものが突然波に変形し、回折の性質をもって障害物を突破し、また弾丸に戻るのです。

 

物理学では、この現象を 「トンネル効果」 と呼んでいます。
しかしながら、このように変幻自在のミクロな粒子君たちはすごく気まぐれで、波に姿を変えるものがいれば、
弾丸のまま壁につっこんで激突してしまうヤツもいます。
野球ボールがめったに壁を突破できない理由は、この気まぐれかつヤンキー気質の粒子の性格から来ています。
粒子全員が一丸となってやる気をだし、一斉に波動に変身、壁の向こうでもとに戻る、なんてことは、
粒子全員が軍隊のようにストイックに訓練を受け、雑技団のように寸分の狂いなく鮮やかな舞いを演じられる、
こういったミラクルな状況でなければ、起きえないのです。
かみ砕いて説明してきましたが、ここまでを総括すると、

「光だろうと物質だろうと、波と粒子両方の姿を取り得る」

ということになります。また、その両面性はミクロな世界では高確率で起きるのです。
次号ではこれにもう一点、興味深い話を追加します。
実はこの粒子性と波動性、人間が観測している時、かならず粒子の性質をとってしまうのです。
これは、同じ現象に対し、人間が見てるか見てないかで結果が変わる、ということを示します。

神隠しも、かならず人が見てないところで起きますよね。
親が見ている前で子供が波動に変形して山を回折していった、なんてアホな話、ありませんよね。
ではでは、次号もご期待くださいませ。

三茶ロボット from Sangendyaya

量子の名づけ親 : マックス・プランク

このブログでは、節々に偉業を遂げた物理学者も紹介したいと思います。

まずは、ドイツの物理学者 マックス・プランク (1858~1947)
前回、光は波であると同時に 「屈強な弾丸である」 説明しましたが、それを最初に見破ったのがこの人。
まさしく量子論の生みの親と言ってもいいでしょう。
実は歴代の学者には結構面白い逸話があります。

プランクは学問に没頭しながら、ナチスのユダヤ人処遇に激しく抗議をした、ひじょーに正義感も強い、人間的によく出来た学者だったと思われます。

彼は最初、ミュンヘン大学に入学し、物理を勉強します。
そのまま熱力学の分野で論文を作成、ドクターの称号を得てエスカレーター的に講師になっています。
たぶん、ボクの予想ですが、ミュンヘンの頃は相当やる気がなかったんじゃないかと。
功績からしても、特にぱっとしたこともないので、テニスサークルにでも入ってウハウハとアレをヨロシクやっていたんだと思います。

とはいえ物理を専攻している時点で、
相当アナーキーなモチベーションは隠し持っていたのでしょう。
物理って、機械や電気電子と違って就職のつぶしも効きませんし、興味本位で学ぶ学問ですし。
その後プランクは電気回路で有名な「キルヒホッフ」に目をつけ、金魚のフンのごとく彼のまわりをウロチョロするようになりました。
「こいつは使える」 と思ったんでしょうね。

そうして、おこぼれを拾いつつも自分の味を出せるようになったプランクは、キール大学の物理学員外教授となり、
1892年にはベルリン大学の教授に昇進、見事 「人生の勝ち組」 に昇格したわけです。素晴らしいですね。
主な成果は、「ハイパー賢者モードにおける電子の最小エネルギー」。
それまで連続量としてしか考えられなかったエネルギーは、ミクロな領域では賢者状態のエネルギーの整数倍になる、
ということを証明しました。実は光子のエネルギーも、この人の名をとった「プランク定数 h」の整数倍になるのです。
物理学の頂上に君臨する知名度の高い学者は、相対性理論のアインシュタインや、量子力学のシュレディンガー等が
よく出てくるのですが、こういった天才たちの才能も、きっとプランクがいなければ発揮されなかったと思います。

プランクのその後、様々な研究所の所長としてオファーが来るのですが、
ちょうどその頃、ナチスのユダヤ人科学者の迫害がヒートアップしていた時代でもあり、彼はこれに対対し猛講義。
当時、プランクはまわりから、「あいつ空気読めない(KY)だよなー」 と、若干やっかいもんキャラのレッテルも貼られ、やむなく辞職。

しかしながら、最終的にはプランクは自分の名前をとった名門、「マックスプランク研究所」をゲッティンゲンに作り、
そこで天下り職員のごとく、あぐらをかきつつ、税金を使いまくってやりたい研究をやりたいだけやり、
エキサイティングな人生に幕を下ろしました。

プランク研究所は今なおドイツの物理界では名門。
この文章を書くにあたり、研究所のページを見てみました。ドイツ語でよーわからんかったのですが、研究の幅が広がってましたね。
現在は物理に加え化学、光学はもちろん、リテラシー的に生物や医学的なサムシングも実践しています。
また、おどろくことに心理学や社会学等、さながらソニーグループのようなトータルソリューションを扱い、
科研費も年間10億ユーロをこえる巨額のバジェットを国からふんだくっているようです。
めでたいですね。すばらしい!

三茶ロボット from Sangendyaya

光が異質なものに化ける瞬間

こんちくわ。三茶ロボットです。
どうも釈然としない不思議な話をしてきましたが、まずは
「星がなぜ見えてしまうか?」について考えていきましょう。

まず、遠くにある星の光は地球に到達するまでに弱りきってしまい、目のレシナール細胞が
反応出来ないハズ、という話をしましたね。
実は波が持っているエネルギーは、以下の二つで決定されます。

①: 波の高さ
②: 波の間隔

海の波といっしょです。高さのある波はかなり陸まで食い込んできますよね。
その上、波の間隔が短ければ、何度も何度も波が打ち上げてくるわけです。

光における波の間隔、すなわち波長が長いものの代表は赤外線選手。
こたつの中や、携帯電話の赤外線通信、つまり合コンの場で大活躍です。
一方、波長が短いものの代表はお肌の天敵、紫外線選手です。さらに波長が短くなると
昨今いろいろとうたわれている放射線の領域に突入します。
端的に言えば、「赤い光は弱い。青や紫は強くて危ない」 と判断していいです。

さて、前準備はこれくらいにして、本題に入りましょう。
星の光は、様々な波長がごちゃまぜになっており、出発点ではものすごい高さのある波です。
しかしながら、地球に到達する頃には、さざ波程度の弱っちい波になるはずです。

ここで常識を覆す現象が起きるのです。
光は、あまりに高さを失うと 「波」 から 「光子」 という、一発が高いエネルギーを帯びた、
「非常に屈強な弾丸」 に姿を変えるのです。
この光子は、波が赤外線や紫外線に分類されているように、波長に比例したエネルギーを
もっています。 つまり、「赤弾丸」 や 「青弾丸」、「黄弾丸」 があると考えることができます。

この弾丸一発のエネルギーは、ちょうどレシナールを反応させるエネルギーをもっていたのです。
ただ、この弾丸は普通の弾丸と違い、
「存在する」 もしくは 「存在しない」 両方の確率を持った不思議な弾丸なのです。
下の絵のように、長旅を経て高さを失いつつある波が、ある地点でデジタル信号のような性質を
もった弾丸になるのです。

実際、この絵の通りボクらは100%の星を見ているわけではなく、「見える」と「見えない」 を同時に
見ていることになるのです。言ってみれば 「30%の星を見ている」、ような感覚です。
バヤリースを飲んでいるようなもんです。
ピンとこないかもしれないのですが、光は波と粒子の両方の性質を持った不思議な存在なのです。
実をいうと、数百メートル先を走っている車のライト。これも、この性質がないと見えないハズなのです。

かなり懐疑的になってしまうかもしれませんが、これが原理原則、と捉えてください。
小さな子供がコップを倒すと中身が流れ出てくることを初めて理解する、くらいのノリでヨロシクです。

さて、この性質だけではもう一つの議題、「ボールが壁をすりぬける」 をまだ理解できませんよね。
次号では、もう一つ別の視点からこの問題を片付けていきたいと思います。

三茶ロボット from Sangendyaya

野球ボールが壁をすり抜ける??

さて、こんばんは。三茶ロボットです。
前回、見えないハズの夜空の星がなぜ見える?という話をしました。
本日はもう一つ、常識では考えにくい話をしましょう。

皆さんガキンチョの頃、キャッチボールの相手がいない時って壁にボールをぶつけてましたよね。
当然ながら、壁に当たったボールは跳ね返り、自分のところに戻ってきます。
ボールのように弾力のあるものは跳ね返り、逆にたまごのようなものを壁に投げれば跳ね返らず割れてしまいます。
これは、高校物理で学ぶ運動量保存則と、投げる物体と壁のもつ跳ね返り係数を考えれば説明がつきます。

実は、この壁とのキャッチボール、命ある限り何億年何兆年と繰り返し続けていくと、
まれに 「ボールが壁をすり抜ける可能性を秘めている」 のです。
もちろん可能性は非常に低いのですが、この学問の理屈では、可能性 0 じゃないのです。

壁にぶつけるものが小さくなればなるほど、この確率は高くなります。
特に皆さん愛用されている電化製品の中には半導体という怪しげな物体が入っているのですが
この半導体の中では非常に小さな電子君が頻繁に壁をすり抜けて遊んでいます。
電化製品の技術は、実はこのボールすり抜けの性質の上に成り立っているのです。

そして古来から伝わる超常現象の一つ 「神隠し」も、親が目を話している隙に小さな子供が
山をすり抜け、山を挟んだ隣町で迷子として捕獲されていた、なんて伝説もあったようです。

うーん、不思議ですねー。
常識で考えると有りえない話ですねー。でも、あるんです。
そしてその性質を逆手にとった技術が今の世の中さえも回しちゃってさえいるんですよ。
いよいよ次号では、ボールと前回の星の話の種明かしを始めようと思います。

三茶ロボット from Sangendyaya

夜空の星って本当は見えないハズなんだけど。。。

こんばんは、三茶ロボットです。
冬って、星が沢山見えていいですよねー。

実はボクらが見ている星って、「昔の星を見ている」 って知ってました?
夜空の星々は地球からとても離れた場所に有ります。
たとえば白鳥座のデネブって星は、地球からざっと2000光年は離れています。
これは「光が2000年かけて到達できるキョリ」、つまり、目で見えるデネブは2000年前の姿を見ていることになるんです。

そんな遠くの星が見えるなんて、人間の目って良く出来てるなーって思うかもしれないけど、
理屈からすると本来星は見えないはずなんです。なぜかって?
じゃぁ、次にちょっとだけ目の構造を探ってみましょうか。

人間は目に入った映像、つまり目に入ってきた光を察知した後、電気信号に変えて脳に送ります。
ここで初めて人間は「見えた」と自覚するわけです。
目の中には、脳への電気信号を発する「レシナール」という細胞がいて、こいつが反応するだけの強い光があれば
すなわち「見える」ということになるのです。
あまり暗い場所、つまり光が弱い場所だと当然ながら、何も見えませんよね。

つぎに光と距離の関係について探ってみましょう。
光の強度は、距離が遠ければ遠くなるほど弱くなっていきます。これは光は音波や海の波と同じ、
波の一種であることを表しています。
ちょっと細かい話をすると、光は電磁波の一種であり、
電磁波の強度は「光源からの距離の2乗に反比例して弱くなる」のです。

これらの理屈からすると、デネブの光は2,000光年の距離を旅した後でもレシナールを反応させる強度が
残っている、ということになります。
しかしながら、計算によると、地球上で観測するデネブの光は非常に弱く、とてもレシナールを反応させる
エネルギーが残っていません。

不思議ですねー、なんで星は見えちゃうんですかねー、気になりますねー。
ここまで非常に一般的なものの見方で話を進めて来ましたが、
これは光の性質について何か決定的な見落としをしている、ということになります。
さて、次号では種明かしの前にもう一つ不思議な例を挙げたいと思います。

三茶ロボット from Sangendyaya