量子bit と 量子性を用いた計算概念

こんちくわ、三茶ロボットです。
前回、話が脱線しましたが元にもどします。
ここまで、量子コンピュータの威力をご説明するまえに現在ハバを利かせている半導体コンピュータ(ゲジゲジ)の仕組みまでをご説明しました。
とりあえずゲジゲジの性質をまとめておくと、

・全ての計算を2進数、つまり0と1のみで行う
・素子の数を増やすほど複雑な計算が可能になる
・複数の計算を実施したい場合、順番に一個ずつ計算する

となります。
このゲジゲジ君にとってボトルネックとなる項目は、「順番に計算する」という部分です。
計算の複雑さよりも計算回数が増えると実行時間が飛躍的に伸びてしまう、というところにあります。
さて、ゲジゲジの内部にある素子は 0 と 1 を表現する半導体bitなのですが、
これに対し量子コンピュータのbitは、0と1がまざった状態を表現することが出来ます。
いくつか量子bitとなる材質が考えられているらしいんすけど、ボクが知っているのは、「電子のスピン」というものになります。

前知識として、このスピンについてお話します。
原子の構造は、中心に原子核、そのまわりに電子がくるくる回っている構造です。
イメージ的には太陽の周りを地球が公転しているようなもんです。ご存知の通り、地球は公転しつつ、地球自体が自転してますよね。
これと同じように、電子くんも自転しています。自転が右回転ならば↑、左回転ならば↓とよく表現をしています。これがスピンです。

 

実は、この自転の方向ですが、これまでに話した量子的な現象がここでも起きています。
光は波と弾丸両方の性質が重なり合った状態、ということをお話しましたが、通常電子くんは右回転と左回転がまざりあった状態にあります。

ここで、↑を1、↓を0とするbitとして電子を考えると、「1と0を同時に取りうるbit」になりますね。
この「量子bit」を素子として前回のゲジゲジのように回路をくみ上げたものが「量子コンピュータ」となるわけです。
前回、2bitの足し算回路をご紹介しました。ゲジゲジ回路内部の各素子は瞬間瞬間で0か1のどちらかに状態が固定されています。
なので仮に複数の入力パターンを同時にぶち込んだとしても、同時に計算することはできません。
しかし、量子コンピュータの場合はこれが可能ですので、2bit足し算の入力パターン16通りを同時に突っ込んだ場合、全ての計算を並列に実行することが出来るわけです。
要は、常識的に逐次処理せねばならん問題を同時に解くことが可能なわけです。

 

しかし!
これまで量子コンピュータの能力について良いことばかり話してきましたが、実は凄まじい弱点を持っています。
干渉縞の実験のお話で、光一発は波と弾丸両方の性質を持っているが、人間が観測した瞬間にその同時性はくずれ、
粒子性のみが残る話をしました。
これと一緒で、量子コンピュータは計算中は全てを同時に扱っており、複数の答えを持っているのですが、人間が観測する瞬間は一個の答えしか見えないのです。

ここが非常にやっかいな性質で、いくら優秀なコンピュータだからといって現在のコンピュータが担う役割全てに据え置きするわけにはいかんのです。
なんだよ、量子コンピュータ使えないぢゃないかっ!と思いますよね。
そうなんです、量子コンピュータの使い道は今まさに世界中の量子力学界が模索している段階なのです。
とはいえ、いくつかの領域で量子コンピュータの使い道は見つかっています。
次回はこの中のひとつ、「暗号化技術の危険性」についてお話します。

って、前回の予告でもコレ言いましたね。だめだぁ、4部作じゃおわらなかった。
フリーザ編を見るくらいのアレで堪忍してくださいませ。

三茶ロボット from Sangendyaya

 

以下、能書き。
量子コンピュータの使い方は今探している、ということについて。
テクノロジーって2種類あると思ってます。
一個は、「あったらええのぅ」を実現する、世間のニーズが先行して技術が立ち上がるタイプ。
もう一個は、その技術や原理自体が非常に興味深く、研究が先に進み、応用として後から実用化されるタイプ。
量子コンピュータは間違いなく後者です。

一般的に考えると、「使えるかどーかわからんもんに開発費をかけることはアホくさい」となるかもしれないですね。
実際、現在の不景気な社会では基礎科学の研究開発機関に割くコストは激減しています。
それよりも、クライアントやエンドユーザのニーズを先読みし、既存技術を組み合わせて3年後5年後の収益を見据えた、
中長期的なビジネスドリブンの技術が主流ですよね。
でも、このケースってほとんどが既存技術の寄せ集めで作られる製品にすぎないんです。
流行のマルチコアCPUだって、いってみりゃpentiumを4つ並べて同時に動かしてる、に近いイメージです。

ボクの自論ですが、新しい科学技術は純粋な興味が先行してなんぼです。
こういう「興味」により、全くなかった発想が誕生し、かつそれらの能力、弊害、リスクまでもが研究されるわけで、
実用化はそのご利益として後からついてくるんだと思ってます。
技術の恩恵をまっとうに受ける時、、このバックグラウンドを忘れるとひじょーに危ないと思ってます。
特に最近ホットな原子力発電にしても、一歩間違ってこうした状況に陥ってるわけです。
全てのリスクヘッジを出来るほど人間が優れた生き物とは正直思ってはいませんが、
ほりえもんの話じゃありませんが過去の背景や関連性というものを見つめた上で技術と向き合える、屈強なヒューマノイドに進化しなければなりませんね、人間は。

ということで、屈強なヒューマノイドを目指すことが前提であれば、ボクは原発賛成派です。
量子論の話が一段落したら、相対性理論の話をしようかと思ってます。原発のメカニズムや歴史・危険性をそこで書こうかなと思います。

量子bit と 量子性を用いた計算概念」への2件のフィードバック

  1. esan from YOKOHAMA 9月 6, 2011 1:23 am

    量子コンピュータの原理って意外とよくわかんなかったんでこういうざっくりなの面白いっす^^
    並列計算が可能なだけで、結局演算性能には現行のCPと同じだけの粒子がいるわけですね?
    とにかく早い、と。

    • sancharobot 9月 6, 2011 1:32 am

      ありがとうございますー!
      そうですね。現行の計算機と違うのは、1と0を混ぜ合わせて計算する、っていう不可思議なところですね。
      結局、量子コンピュータの計算って、答えもある確率で出てくるんで、検算が必要だそうです。
      演算:量子コンピュータ ⇒ 検算:現行コンピュータ これが未来の適用像らしいでございます。
      ぜんぜん更新してなくてすみまへん。

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